事務局だより(2019年1月16日)

 1月の講演会では、昨年の歴史的といえる韓国と北朝鮮首脳の会談について、文化・スポーツ交流を含めたその前史から説き起こしていただきました。また、日本海を挟んだ北東アジア諸国の地政学的、歴史学的関係の重要性についても新鮮な視座を提示いただきました。韓国や北朝鮮の報道を踏まえた金正恩委員長の「改革・開放」路線や米朝関係についての考察は、日本の報道のみに依拠しがちな私たちに、改めて国際問題一般について、多角的な検証が必要であることを実感させるものでした。
 次回2月は、日本の周縁部の歴史としてのみ扱われがちな北海道やアイヌの歴史を、世界史という広いパースペクティヴからとらえるとどのような相貌を現すのか、北海道から『今学ぶアイヌ民族の歴史』の著者をお迎えして語っていただきます。
どうぞ奮ってご参加ください。
 3月の講演会は9日(第2土曜日)に開催します。辺野古をめぐって揺れる沖縄の現状を中心にお話しいただく予定です。
 詳細は追ってお知らせいたします。


 大寒から名のみの春へ寒気が勢いづくなか、受験シーズンを迎えています。ひとは、願った目的地へとたどり着くことのなさそうな旅路の終盤になっても、この時期の凛と張りつめた冷気と緊張感は覚えているようです。若いひとたちの健闘を願ってやみません。
 
―こころざすひとりに一つ冬銀河(川崎洋吉)

第159回講演会のお知らせ

『アイヌ・北海道史から見た世界史;世界史から見たアイヌ・北海道史』

日付: 2019年2月22日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
吉嶺 茂樹(よしみね しげき)氏

講演者プロフィール:
吉嶺茂樹 氏
北海道有朋高等学校(通信制)教諭
 1962年福岡県生まれ。西南学院高校・熊本大学文学部・熊本大学大学院文学研究科(西洋史学専攻)修了。
 1986年より北海道の公立高校勤務。高大連携歴史教育研究会運営委員(会報担当)。上記の他に、共著に『世界史を動かしたモノ辞典』(日本実業出版社)、『お金の世界史200問』、(NHK出版)東京書籍『世界史A』(編集協力者)等。

概要:
 昨年夏、『今学ぶアイヌ民族の歴史』(山川出版社)を上梓した。約15年がかりの作業であった。私は高校の世界史教員の立場から、本書の前近代史(主に日本史の江戸時代にあたる)を分担執筆した。アイヌ史や北海道史は、日本史の枠組みのみで考えると、見えなくなる内容が多いからである。さらに教室でのアイヌ史実践を広げていくためには、これまでのアプローチとは少し違う方向から考え直す必要があるとかねてから考えてきた。本書には、その内容を一部、織り込むことができたと思っている。新学習指導要領で高校の必修科目となる「歴史総合」を考える際には、高校一年段階で「歴史を総合するとはどういう営みなのか」が分かるような内容が必要であるが、アイヌ・北海道史にはその可能性がたくさんあると筆者は考えている。
 今回の講演では、実際の史資料を基に、このような問題を考えてみたい。さらに、本書に織り込むことができなかった「北方に関する地図認識の問題」や、現地での調査スライドなども用いて、高校現場での多様な歴史教育のあり方についても考えてみたい。

事務局だより(2018年12月26日)

 12月の講演会では、日本語ネイティヴではない日本在住者とコミュニケートする際の言葉遣い(=気遣い)のコツを、豊富な具体例を引きつつ、お話しいただきました。ネイティヴゆえに看過しがちな「やさしい日本語」が、外国人だけでなく日本人も含む他者一般にたいするやさしさから作られていくことに改めて気付かされる講演でした。

 次回1月は、日韓の「境界人」として生きる講演者をお迎えし、大きな転換期を迎えている韓国と北朝鮮の現況を分析していただきます。同時に、歴史問題等で両国との関係が混迷を深めている日本を含めて、北東アジアの平和と安定に向けた思考とアクションの可能性について語っていただきます。

どうぞ奮ってご参加ください。

2月の講演会は2日(第1土曜日)に開催します。アイヌから見た世界史像を中心にお話しいただく予定です。

詳細は追ってお知らせいたします。


 ひとの社会が時間を分節し、歴史を刻むことで成り立っていることをとりわけ意識させられる時期を迎えました。
 今年も皆さまからはご支援と励ましの声を数多くいただきました。深謝申し上げるとともに、皆さまの明るさに満ち満ちた年末年始を祈念いたします。

―かるがると上る目出度し餅の杵(高浜虚子)

第158回講演会のお知らせ

『韓半島の平和構築と東北アジア地域主義 ―「分断体制」の克服と日韓「ミドルパワー外交」の可能性』

日付: 2019年1月12日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
権容奭(クォン・ヨンソク)氏

講演者プロフィール:
権容奭(クォン・ヨンソク)氏
一橋大学大学院法学研究科教員。早稲田大学韓国学研究所招聘研究員。1970年、韓国・ソウル生まれ。子供の頃から父親の仕事の都合で日韓を行き来、日韓の「境界人」として生きている。専門は日本外交史、東アジア国際関係史、日韓関係史、韓国現代史。映画・音楽など日韓のポピュラー・カルチャーやサッカーなどスポーツにも詳しい。
著書に『岸政権期のアジア外交―対米自主とアジア主義の逆説』、『「韓流」と「日流」――文化から読み解く日韓新時代』(NHKブックス)、訳書に『イ・サンの夢見た世界――正祖の政治と哲学』(上・下、キネマ旬報社)、監訳書に『沸点―ソウル・オン・ザ・ストリート』(ころから、2016)などがあり、文在寅韓国大統領の自伝『運命―文在寅自伝』(岩波書店、2018)に「運命に導かれたキャンドル大統領―文在寅政権の歴史的位相」と題する解説文を掲載している。

概要:
 2018年に歴史的な南北/米朝首脳会談が開催され、「韓半島」は和解と融和への一歩を踏み始めています。「終らない戦争」となった朝鮮戦争を終結させ、長きにわたってこの地域を規定した「分断体制」を克服し、韓半島および北東アジアに平和を構築し、共生と繁栄をもたらす北東アジア地域主義を再起動させる絶好のあるいは最後の機会が訪れているともいえます。このような韓半島の新情勢についての現状分析と、韓国・文在寅政権のイニシアチブの歴史的意義および日本ではあまり知られていない南北交流の実態について、映像なども紹介しながらお話したいと思います。次に、2018年の平昌冬季五輪、2020年の東京五輪、2022年の北京冬季五輪と日中韓で立て続けにオリンピックが開催されるなど、ここ数年は北東アジア地域主義の進展にとっての「ゴールデンタイム」といえます。とりわけ、日本と距離的に最も近く歴史的文化的に密接な関係にありながらも、日本のパスポートで唯一行けない国である北朝鮮との「和解」と関係正常化に向けて、東京五輪はまたとない機会といえます。戦後日朝関係の歴史も紐解きながら、日朝国交正常化への道筋を模索し、韓半島の平和構築と北東アジアに向けての日韓の役割と連携の可能性について、「ミドルパワー外交」という観点から考えてみたいと思います。日本と韓半島の関係は大変こじれていて、今が「正念場」だともいえますが、こういうご時期だからこそ、地道に冷静に歴史的観点を踏まえた市民レベルでの議論と対話が必要だと思います。試みに、Korean Peninsulaに当たる地域概念として、日本で固定化されたイメージと偏見を内包する「朝鮮半島」ではなく、「韓半島」という概念を用いることから始めてみたいと思います。

2017年度財務諸表を公開します

さる11月10日に、本歴史文化交流フォーラムの「第16回総会」が行われ、
2017年度事業報告と会計報告、ならびに2018年度事業計画案と予算案が審議されました。

いずれも会員総数の過半数を越える賛成で可決されました。

2017年度の財務諸表を以下に掲載いたします。

2017年度財務諸表

追悼 蓮沼泰子さん

わたしたち歴史文化交流フォーラムのメンバーである蓮沼泰子さんが、2019年8月1日に亡くなりました。蓮沼さんには、現フォーラムの前身であった東欧文化フォーラム時代からおよそ30年に渡って、熱心に活動にご尽力いただいたほか、書道の会でもご指導をいただきました。

12月1日に、歴史文化交流フォーラムの主催で、蓮沼泰子さんをしのぶ会を行いました。しのぶ会での南塚理事長の追悼文「書家としての蓮沼泰子」を以下に掲載いたします。

「書家としての蓮沼泰子」

事務局だより(2018年11月28日)

 11月の講演会では、幕末1867年に将軍の実弟、徳川昭武の随員として欧州に渡った渋沢栄一の旅路について、渋沢の手紙や現地の報道を参照しつつ多角的にお話しいただきました。質疑応答では、さらに明治から大正にかけて展開された渋沢の多岐に渡る活動をめぐっても議論が弾みました。一言に不世出の天才的事業家と見なされがちな渋沢の、辛抱強く堅実に自分の仕事をこなしていく姿が新鮮な印象を残すお話しでした。

次回12月は、講師に日本語教育の専門家をお迎えします。この数年、世界のさまざまな地域から、留学や仕事で日本を訪れる外国人が激増しています。

どうぞ奮ってご参加ください。

1月の講演会は12日(第2土曜日)に開催します。朝鮮半島の現状をめぐってお話頂く予定です。

詳細は追ってお知らせいたします。


総じて気温の高かった秋が暮れて、師走月を迎えようとしています。寒い朝に手に取るマフラーの感触や夜道の居酒屋の赤い灯火が、なんとなく心を温めてくれる気がします。忘年会シーズンも目前です。温もりある極月をお過ごしくださいますように。

―寄鍋や隣も小さきクラス会(栗原政子)

 

第157回講演会のお知らせ

『『やさしい日本語』でコミュニケーションしよう』

日付: 2018年12月22日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
近藤 正憲(こんどう まさのり)氏

講演者プロフィール:
近藤正憲 氏
歴史文化交流フォーラム世界史研究所特別研究員。
青年海外協力隊員を皮切りに主として海外で日本語教師として活動。
国際交流基金専門家、上級専門家としてチェコ、イラン、ウズベキスタンで日本語を教える。現在龍谷大学、立命館大学で留学生対象の日本語教育担当。
他機関での日本語教師養成にも関わる。

概要:
「やさしい日本語」とは、普通の日本語情報に、「人為的な加工」を施して、
多くの人にとって理解しやすい情報にする取り組みです。外国人、高齢者、身体障害者といった情報弱者に必要な情報を提供し、また彼らの伝えたい情報をくみとることができるようになります。
大規模災害の際の情報提供はもちろん、平時における自分たちのコミュニケーションスタイルの見直し、外国籍住民との交流や、インバウンド観光客へのアプローチなど、様々な面での応用が可能です。
今回は「外国人」(非母語話者)の発する「変な日本語」の理解の仕方、そして「やさしい日本語」のつくり方をご紹介します。
「やさしい日本語」は難行ではなく易行です。そして「やさしい日本語」はやさしい日本人の心の中にあります。

(例)
「避難所(ひなんじょ)」→みんなが逃(に)げるところ
「炊き出し(たきだし)」→温(あたた)かい食(た)べ物(もの)を作(つく)っ
て配(くば)る
出典:弘前大学人文学部社会言語学研究室『増補版「やさしい日本語」作成
のためのガイドライン』

事務局だより(2018年10月24日)

10月の講演会は、9月のハルビンに続き、やはり中国東北部の瀋陽と大連、新京に焦点を当てていただきました。「満鉄の世界」の過去を現代から透かし見るようなお話しから、巨大な植民地近代の残像が浮かび上がってきました。
次回11月は、渋沢栄一資料館の学芸員の方をお迎えして、幕末1867年の徳川昭武に同行し、パリ万博へ赴いた渋沢栄一の旅路についてご講演いただきます。
どうぞ奮ってご参加ください。

12月の講演会は22日(第4土曜日)に開催します。日本語教育の専門家の方をお招きしてお話を伺います。
詳細は追ってお知らせいたします。


箕作麟祥『萬國新史』の翻刻版が好評発売中です。日経新聞の文化欄に紹介がありますので、記事を紹介いたします。

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日本経済新聞(2018年10月2日)

日脚がつとに早くなりました。一仕事を終えて窓外に目をやると、もうすっかり暗くなった街路が広がっています。まだ寒いというほどではない長い夜の時期の交友や飲食は、ひときわ味わい深いように感じられます。

―秋の夜や紅茶をくぐる銀の匙 (日野草城)

第156回講演会のお知らせ

『渋沢栄一、パリ万国博覧会へ行く』

日付: 2018年11月10日(土)
時間: 16:00 – 18:00
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)

講師:
関根 仁(せきね ひとし)氏

講演者プロフィール:
関根仁 氏(渋沢史料館学芸員)
中央大学大学院文学研究科日本史学専攻博士後期課程単位取得退学。2003年より現職。専門は日本近代史。渋沢史料館では、幕末の渋沢栄一の渡欧および『航西日記』の解読と編纂過程を研究。主な担当展覧会として「渋沢栄一、アメリカへ~100年前の民間経済外交~」(2009年)、「渋沢栄一と『実業之日本』」(2011年)、「徳川慶喜公伝と渋沢栄一」(2013年)、「渋沢栄一渡仏150年 渋沢栄一、パリ万国博覧会へ行く」(2017年)など。

概要:
慶応3年(1867)3月7日、渋沢栄一はフランス・パリに到着しました。
栄一は当時27歳の幕臣で、パリ万国博覧会に参列する将軍徳川慶喜の弟・昭武に随行していたのです。栄一にとって初めての異国旅。約1年半におよぶ滞在中、近代西洋社会は栄一の目に、どう映ったのでしょうか。
本講演では、パリから日本にいる妻や家族に宛てた手紙、日記など様々な資料から栄一の欧州体験をたどります。栄一にとって慶応3年の渡仏とは、どのような意味を持ったのかを、あらためて考える機会となれば幸いです。